あの人は、なぜあんなにケロッとしているのだろう?
職場で理不尽なことを言われても、すぐにケロッとして雑談している同僚。 誰かに嫌味を言われても、「ふーん、そうなんだ」と受け流せる友人。
いわゆる「メンタルが強い」と言われる人たちを見て、「自分とは脳の作りが違うんじゃないか」と感じたことはありませんか?
私たちHSPは、相手の言葉の裏側や、小さな態度の変化を深く読み取り、それをいつまでも反芻(はんすう)して考え込んでしまいがちです。
最近、ある動画で「メンタルが強い人は、自分を嫌う人のために思考の容量を割かない」という話を聞き、ハッとしました。
彼らは、決して冷酷なわけでも、何も感じていないわけでもないと思います。 ただ、「心のエネルギーをどこに使うか」の基準が、私たちとは少し違うだけなのかもしれません。
この記事では、HSPがついやってしまっている「心に負荷をかけるアクション」と、メンタルが強い人の思考法から学ぶ、自分を守るためのヒントについて考えてみたいと思います。
1. HSPとメンタル強者の決定的な違い:「嫌われること」への反応
- HSPの(ついやってしまう)反応:
誰かに嫌われたり、否定的な態度を取られたりすると、「自分の何がいけなかったんだろう?」「誤解を解かなきゃ」と、関係修復のために膨大なエネルギーを使ってしまう。全員と仲良くしなければ、という無意識のプレッシャーがある。- メンタル強者の思考法:
「ああ、この人は私のことが嫌いなんだな。じゃあ、関わるのはやめよう(必要最低限にしよう)」と、事実をただ事実として受け入れ、それ以上深追いしない。- 【HSPが取り入れたい技術】:
「2:6:2の法則」を心の盾にする どんな集団でも「気の合う人が2割、どちらでもない人が6割、合わない人が2割」いると言われています。HSPはこの「合わない2割」を「0」にしようと頑張りすぎてしまいます。メンタル強者は最初から「2割には嫌われるものだ」と割り切っています。「今、私が気にしているのは、その『どうしようもない2割』の人かもしれない」と気づくだけで、心が少し軽くなります。
2. エネルギーの使い方の違い:「変えられない他人」vs「変えられる自分」
- HSPの(ついやってしまう)反応:
不機嫌な人、マウントを取ってくる人、愚痴ばかりの人…。
そんな「デメリットの多い相手」の感情を察知し、「私がなんとかしてあげなきゃ」「機嫌を直してもらわなきゃ」と、相手を変える(コントロールする)ことに思考の容量を割いてしまう。- メンタル強者の思考法:
「この人は今、機嫌が悪いんだな(私のせいではない)」「この人はそういう性格なんだな」と線引きし、相手の感情の責任を負わない。
エネルギーを「自分の仕事」や「自分の楽しみ」に集中させる。- 【HSPが取り入れたい技術】:
心の中に「透明なフィルター」を一枚挟む
完全にシャッターを下ろして無視をするのは、現実的には難しいですよね。場の空気が悪くなるのも怖いです。
そこで提案したいのが、相手と自分の間に、一枚の「透明なアクリル板(フィルター)」があるイメージを持つことです。
表向きの対応:
フィルター越しに、笑顔で「おはようございます」「承知しました」と、必要なコミュニケーションは取ります。これで関係は壊れません。
心の内側:
しかし、相手が発するトゲのある言葉や不機嫌なオーラは、そのフィルターに当たって跳ね返され、あなたの心の中までは届きません。
「今、私は『感じの良い同僚』を演じるモードに入っています」と、自分を少し俯瞰(ふかん)して見る。俳優が役を演じるように、「心の一部を切り離して対応する」感覚を持つことで、受けるダメージを減らすことができます。
3. 批判やネガティブな感情への向き合い方:「事実」と「思考」を切り離す技術
- HSPの(ついやってしまう)反応:
誰かの不機嫌な態度や、自分への批判的な言葉(事実)に触れた時、それが瞬時に
「私は嫌われている」「私はダメなんだ」というネガティブな思考と結びつき、それが「変えられない真実」のように感じられて、動揺してしまう。- メンタル強者の思考法:
起きた「事実」と、それに対する自分の「解釈(思考)」を、無意識に分けて捉えている。「Aさんは不機嫌だ(事実)。きっと何か嫌なことがあったんだろう(解釈)。私には関係ないな(結論)」と、事実に感情を乗せすぎない。- 【HSPが取り入れたい技術】:「脱フュージョン」で思考と距離を置く
私たちHSPも、この「事実と思考の切り離し」を意識的に行うことで、心の負担を劇的に減らすことができます。そのための、心理学的なテクニックを一つご紹介します。それは、思考の語尾に「~と、私は考えている」と付け加える、というシンプルな方法です。
いつもの思考パターン(フュージョン状態):
「上司が不機嫌だ。私のせいだ。私は仕事ができない人間だ。」
(思考が「事実」と同化して、妄想に縛られて心を痛めてしまっている状態)
テクニックを使った思考(脱フュージョン状態):
「上司が不機嫌だ。(これは事実)」 「だから私のせいかもしれない、と、私は考えている。」 「私は仕事ができない人間だ、と、私は今、感じている。」たったこれだけ?と思うかもしれませんが、効果は絶大です。
「~と考えている」と付け加えることで、その思考は「絶対的な真実」ではなく、「私の頭の中に浮かんだ、ただの言葉のデータ」へと格下げされます。思考と自分との間に、ほんの少しの隙間(距離)を作る。それだけで、「思考の渦」に飲み込まれずに、冷静さを取り戻すことができるのです。
まとめ:「全員に好かれる」を手放した時、あなたの繊細さは最強の武器になる
「メンタルが強い人」の思考法、いかがでしたか? 少しドライで、冷たく感じたかもしれません。
でも、彼らは決して「冷酷」なわけではありません。 ただ、「自分のエネルギーには限りがある」と知っていて、それを「誰に、何に使うべきか」を、シビアに見極めているだけなのです。
私たちHSPは、その豊かな感受性ゆえに、つい目の前の全員を理解し、全員と良い関係を築こうとしてしまいます。 ですが、それは、一台の乗用車に100人を乗せて走ろうとしているようなもので、仮に少し走れたとしても必ず遠からず力尽きてしまいます。
今日から、ほんの少しだけ、「全員に好かれようとする努力」を手放してみませんか?
嫌いな人、合わない人に対して、心のシャッターを下ろすこと。 ネガティブな感情に「透明なフィルター」をかけて、自分を守ること。 「脱フュージョン」で、思考の渦から抜け出すこと。
これらは、決して「冷たさ」ではありません。 あなた自身を守り、そして、あなたが本当に大切にしたい人たちのために、その素晴らしい「繊細さ」というエネルギーを温存しておくための、必要な「賢さ」なのです。
あなたが「全員」ではなく、「大切な数人(そして自分自身)」のために、その才能を使えるようになった時。 あなたの「繊細さ」は、誰にも真似できない、最強の武器になるはずです。
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